状態確認の観察ポイント

看護師は、以下のポイントに注意しながら入居者の状態を観察します。

呼吸状態

呼吸数、呼吸音、酸素飽和度などを確認し、呼吸困難や無呼吸の兆候を見逃さないようにします。肺炎や喘息など呼吸器系疾患の既往歴がある場合は特に注意深く観察します。

循環状態

血圧、脈拍、皮膚の色、体温などを確認し、急変の兆候を早期に発見します。心不全や不整脈の既往がある場合は、脈の乱れや胸の痛みにも気を配ります。また、顔色や手足の冷えなども循環状態悪化のサインとなる可能性があります。

体温

発熱や低体温がないか確認します。高齢者は感染症を発症しても発熱しにくい場合があり、体温以外の変化にも注意が必要です。

意識レベル

呼びかけへの反応や、意識状態の変化に注意します。意識レベルの低下は、脳卒中や低血糖などの緊急事態を示唆している可能性があります。

その他

疼痛の訴え、体位、皮膚の状態、排泄状況なども確認します。特に、夜間はトイレに行く回数が多くなる高齢者もいるため、転倒リスクにも配慮が必要です。また、皮膚の状態を観察することで、褥瘡（床ずれ）の早期発見につなげます。排泄状況の変化は、脱水症状や感染症などのサインとなることがあります。

夜間は、日中に比べて環境変化によるストレスや身体の負担が増大し、さまざまな症状が現れやすくなります。そのため、看護師によるこまめな観察と迅速な対応が重要です。

バイタルサインの変動と観察の重要性

夜間はバイタルサインの変動が起こりやすく、体調変化の兆候を見逃さないための細やかな観察が必要です。看護師は定期的な巡回を行い、入居者の状態を注意深く確認します。

脱水症状への対応

夜間は脱水になりやすい高齢者に対しては、水分補給を促したり、経口補水液の摂取を勧めます。必要に応じて医師の指示に基づき点滴を行うなど、適切な対応を行い、点滴ルートの確保や投与速度、投与量の管理など、安全な実施に配慮します。

褥瘡（床ずれ）予防

褥瘡（床ずれ）予防のための体位変換も重要な看護ケアです。定期的な体位変換で血行促進や皮膚への圧迫を軽減し、褥瘡の発生リスクを低減します。体位変換の際には皮膚の状態を観察し、発赤や水疱などの初期症状を見逃さないように注意し、褥瘡の発生リスクが高い入居者には、特殊マットレスやクッションの使用なども検討します。

せん妄への対応

夜間はせん妄といった日中には見られない体調変化が起こることもあります。高齢者は環境の変化や、痛み、発熱、薬の副作用、脱水、感染症などさまざまな要因でせん妄を発症しやすいため、注意が必要です。せん妄は、意識障害、認知機能の低下、幻覚、妄想などの症状を呈し、日常生活に支障をきたす可能性があります。

まずは原因を探り、環境調整（照明や騒音の軽減、馴染みのある物の配置など）、安心できる声かけ、現実見当識を促すなどの非薬物療法を行います。必要に応じて医師の指示による薬物療法も検討します。

不穏状態への対応

不穏状態には、傾聴や共感、アロマテラピー、音楽療法、軽い運動、マッサージなど、個別の状況に合わせたケアを提供し、落ち着きを取り戻せるよう支援します。不穏状態を引き起こす原因となる身体的な問題（痛み、便秘、尿閉など）がないか確認することも重要です。

その他の夜間特有の症状への対応

夜間特有の症状として、夜間頻尿、睡眠障害、悪夢、睡眠時無呼吸症候群なども挙げられます。これらの症状に対しても、個別の状況に合わせたケアを提供し、快適な睡眠をサポートします。